心理職の守秘義務
医者をなめるな
これは友人に聞いたお話になります。
ある友人が保険のことで、病院での事を保険屋さんに言って欲しくないことがあったので、医師に
「もし、保険屋さんに聞かれたら話しますか?」と聞いたそうです。
そしたら、「医者をなめるな!」と言われたそうです。
この話を聞いた時に私はかっこいいな。そんな風に言える心理カウンセラーでいたい!
そんな風に思いました。
医師の守秘義務
でも、何で「医者をなめるな!」と言われたのでしょう?
友人とその医師とでは、そう言える人間関係が出来ていたからそんな言い方をされたのですが、「医者をなめるな!」と言われた背景には、医師に課せられる守秘義務があります。
医師・患者関係において知り得た患者に関する秘密を他に漏洩してはならないという医師の義務です。
その法律というのが、
刑法134条(秘密漏示)第1項
「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、・・・の職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
という内容です。
心身に不具合をもつ患者はそのことを他に開示したくないのが通例で、また医師にとっては、よき医療を施すためには患者からの率直な事実の開示が不可欠であり、そのためには開示した事実が他に漏洩されることがないという医師に対する信頼がなくてはならないと考えられるからです。
引用元 日本医師会
守秘義務の基で仕事をする医師として当然のセリフなのです。
そして、そのような医師と同じ様に心理職にも守秘義務があります。
心理職に課せられる守秘義務
心理職に課せられる守秘義務とは?
心理職の国家資格である公認心理師の公認心理師法では、
第41条
公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知りえた人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。
第46条
第41条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
守秘義務違反の罰則を医師と比べると、医師は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
公認心理師は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると、医師以上に重い守秘義務が定められています。
正当な理由というのは
- 要心理支援者の許可を取り、その支援に資する行為のために活用するとき(情報共有等の場面)
- 要心理支援者の許可はもらえなかったが、自傷他害の恐れが高いと判断できるとき
- その他、法律上規定されている事柄(養育者による虐待が疑われ児童相談所に通告する場合)
が考えられます。
心の支援をする心理職全般に課せられる法律ではありませんでですが、心の支援をする心理職にとっては当然のことなのです。
法律で定められる以前の倫理規定
医師は法律になる前は倫理的義務でした。
公認心理師は2年前に国家資格になり歴史が浅いのですが、心理職の歴史が長い欧米の心理カウンセラーにも、医師と同じ様に倫理規定に定められています。
カウンセラーの職業倫理
第一原則 相手を傷つけない、傷つけるような恐れのあることをしない相手を見捨てない。同僚が非倫理的に行動した場合にその行動を改めさせること。
第二原則 十分な教育・訓練によって身につけた専門的な行動の範囲内で、相手の健康と福祉に寄与する
第三原則 相手を利己的に利用しない多重関係を避ける。
第四原則 1人1人を人間として尊重する
第五原則 秘密を守る
第六原則 インフォームドコンセントを得、相手の自己決定権を尊重する。
第七原則 全ての人を公平に扱い、社会的な正義と公平・平等の精神を具現する
詳細はカウンセラー職業倫理より
倫理規定に定められているのには、心の相談に来られるクライエントさんは、医師に話すことよりも、人には聞かれたくない、親にも友達にも今まで誰にも話した事がない話しをされる事が多々あります。
医師よりも個人情報に多く関わる仕事だからこそ、罰則も重く定められています。
そんなお話しを安心して話すためには、絶対に侵されることのない秘密が守られる空間が必要です。
そんな安心できる空間があって初めて、これまで誰にも話したことがなかったような話でも安心してお話しできて、望むように楽になることもできます。
だから、カウンセリングが成立するのです。
これまで人の心に寄り添うこの仕事をさせて頂いていたら、もしも、法律には定められていない倫理規定だとしても、絶対にないがしろにしてはいけない、大事なことだと実感する事が多々ありました。
正当な理由に該当しない限り、外に漏らしません。
心の支援は福祉に近い事業
最近、いくつかの企業さんからセミナーや、カウンセリングで提携を組みませんかと、お話を頂く事があります。
とても有り難いお話なのですが、心の支援をするとなると守秘義務に対する感覚の違いが生じることがあります。
それがもしかすると、企業的には利益の出やすい仕組みかもしれません。
セミナーだけでしたら、守秘義務の確認は必要ではないのですが、カウンセリング (心の支援)をする前には、守秘義務についての説明をして確認を必ず取ります。
セミナーの申し込み時に一つ一つ確認をとっていたら障壁になり、申し込みが減る可能性の方が高く企業利益には結びつきません。
セミナーでしたら問題ないのですが、心理支援を行うのであれば、例外は作りません。
どのような場合にでも一貫して守ります。
心理職として倫理上にも法律上にも定められる守秘義務で、当たり前の事ですが、来られる方が望む様になれる様に、より楽に より幸せに過ごせるように。
「心理職を舐めるな。」そう言える心理職あるために、守秘義務を遵守いたします。
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